VBAにおけるVariant型の自動型変換

VBAのVariant型は、あらゆるデータ型を格納できる特別なデータ型です。
この特性により、自動的にデータ型が変換される（自動型変換）という特徴を持っています。
本記事では、Variant型の自動型変換の仕組みや注意点について解説します。

1. Variant型の自動型変換とは？

Variant型の変数は、代入する値によって自動的に適切なデータ型に変換されます。

例えば、以下のコードを実行すると、v は整数（Integer）として扱われます。

Sub TestVariant()
    Dim v As Variant
    v = 10             'Integerとして扱われる
    MsgBox TypeName(v) '"Integer"
End Sub

しかし、以下のように小数を代入すると、自動的にDouble型になります。

Sub TestVariantDouble()
    Dim v As Variant
    v = 10.5           'Doubleとして扱われる
    MsgBox TypeName(v) '"Double"
End Sub

代入する値に応じて、適切なデータ型に変換される。

文字列を代入すれば、String型に変換されます。

Sub TestVariantString()
    Dim v As Variant
    v = "Hello"
    MsgBox TypeName(v) '"String"
End Sub

数値を文字列に連結すると、自動的にString型へ変換されます。

Sub TestVariantConcat()
    Dim v As Variant
    v = 10 & " apples" '数値 + 文字列 = 文字列に変換
    MsgBox TypeName(v) '"String"
End Sub

数値と文字列の混合演算では、文字列型へ変換される。

論理値（Boolean型）も自動的に変換されます。

Sub TestVariantBoolean()
    Dim v As Variant
    v = True
    MsgBox TypeName(v) '"Boolean"
End Sub

日付として認識できる値を代入すると、自動的にDate型に変換されます。

Sub TestVariantDate()
    Dim v As Variant
    v = #2025/2/25#
    MsgBox TypeName(v) '"Date"
End Sub

日付の値を代入すると、自動的に Date 型へ変換される。

Variant型には、特別な値として Null や Empty を格納できます。

Sub TestVariantNull()
    Dim v As Variant
    v = Null
    MsgBox TypeName(v) '"Null"
End Sub

Sub TestVariantEmpty()
    Dim v As Variant
    v = Empty
    MsgBox TypeName(v) '"Empty"
End Sub

Null や Empty を代入すると、それぞれの特殊な状態が保持される

Variant型は便利ですが、以下のような注意点もあります。

例えば、以下のような計算をすると、String 型として連結されてしまいます。

Sub TestVariantIssue()
    Dim v As Variant
    v = "10" + 5  '"105" になる（数値ではなく文字列として結合される）
    MsgBox v
End Sub

数値計算を行う場合は、明示的な型変換（CInt や CDbl など）を推奨。

Variant型は内部的に型を判別する処理が発生するため、明示的な型よりも処理速度が遅くなることがあります。
大量の計算処理では Integer や Double を使った方が高速。

Variant型は柔軟な分、通常の型よりもメモリを多く使用します。
例えば、Integer 型の変数は 2バイト ですが、Variant 型は 16バイト 必要です。
大量のデータを扱う場合、不要な Variant の使用は避けた方がよいでしょう。

便利な一方で、適切に使わないとバグの原因になるので注意しよう！