IT業界に関わると、よく耳にする「SES」「SIer」「技術者派遣」といった言葉。
これらは一見似ていますが、契約内容や働き方、責任範囲が大きく異なります。
この記事では、それぞれの違いや特徴を初心者にもわかりやすく解説します。
目次
1. 契約形態の全体像
まずは、主な契約形態をざっくりと比較してみましょう。
契約形態 | 主な報酬対象 | 指揮命令者 | 雇用関係 | 責任範囲 |
---|---|---|---|---|
SES(準委任) | 作業時間(工数) | 派遣元(建前) | 派遣元と技術者 | 作業遂行責任 |
技術者派遣 | 作業時間(時給) | 派遣先 | 派遣元と技術者 | 作業遂行責任 |
請負(受託開発) | 成果物 | 請負元(発注者NG) | 請負元と技術者 | 成果物完成責任 |
業務委託(個人) | 成果物/工数 | 指示は受けない | 雇用なし(個人事業主) | 自己責任 |
2. SES(システムエンジニアリングサービス)
✅ 概要
- 契約形態:準委任契約
- 働き方:客先常駐が多い
- 報酬:作業時間に応じて支払われる
✅ 特徴
- 派遣先で働くが、あくまで指示命令は派遣元(所属企業)
- 成果物ではなく「作業を行ったこと」に対して対価が支払われる
- 技術者の稼働時間により売上が立つため、時間管理が重視される
✅ 注意点
- 実際には現場の社員から直接指示されることも多く、「派遣」との境界が曖昧
- 建前と実態がずれると「偽装派遣」と見なされる恐れもある
3. 技術者派遣(一般派遣・特定派遣)
✅ 概要
- 契約形態:労働者派遣契約
- 働き方:派遣先で就労し、指示も派遣先が出す
- 報酬:時給や月給ベースで支払われる
✅ 特徴
- 現場の上司が直接指示
- 就業時間・休憩・休日などは派遣先の就業規則に従う
- 36ヶ月ルールなど、法的な期間制限がある
✅ 注意点
- 派遣元(雇用主)が社会保険や給与を負担
- 派遣先に直接雇用されるには「派遣切替」などの手続きが必要
4. SIer(システムインテグレーター)
✅ 概要
- SIerとは企業形態であり、契約形態ではない
- システム開発や保守運用を請負契約、SES、派遣などで提供する企業のこと
✅ 特徴
- 大手SIer(例:NTTデータ、富士通など)は、**プライム契約(元請)**を持ち、下請けを束ねる
- プロジェクト単位で複数の契約形態を組み合わせて構成
5. 請負契約(受託開発)
✅ 概要
- 契約形態:請負契約
- 働き方:成果物を納品することが目的
✅ 特徴
- 指揮命令は一切不可(発注者は口出しできない)
- 納品物に対して対価が発生
- 作業場所・時間・やり方などはすべて請負元が自由に決定
✅ 注意点
- 成果物に対する責任が重いため、仕様変更や追加要件は契約変更が必要
- 実質的に指示されると偽装請負になる可能性がある
6. 業務委託(フリーランスとの契約)
✅ 概要
- 個人事業主や法人との契約(請負または準委任)
- 自由な裁量で作業ができる働き方
✅ 特徴
- 雇用関係がないため、社会保険などは各自で対応
- 成果物または作業時間ベースで報酬を受け取る
- 働き方・稼働時間は柔軟かつ交渉可能
7. よくある混同・誤解
よくある誤解 | 実際は? |
---|---|
SESと派遣は同じ? | 法的には別。指揮命令の有無がポイント |
SIerは契約形態? | 契約形態ではなく、開発提供企業のこと |
客先で働けば全部「派遣」? | 派遣契約でないと違法になることも |
フリーランスに指示を出してもいい? | 原則NG。成果物に関してのやりとりのみ可 |
8. まとめ:どれが向いているのか?
状況・目的 | 適した契約形態 |
---|---|
一時的にスキルを補いたい | 技術者派遣、SES |
外注にシステム一式を任せたい | 請負契約(SIer利用) |
柔軟で専門性の高い人材が欲しい | SES、業務委託(個人) |
長期的に関係を築きたい | 直接雇用 or フリーランス契約 |
9. 補足:契約ごとの違いまとめ図(簡易)
[SES] → 指示:派遣元、報酬:時間、
責任:作業遂行
[派遣] →
指示:派遣先、
報酬:時間、
責任:作業遂行
[請負] →
指示:不可 、
報酬:成果、
責任:成果物納品
[業務委託] →
指示:不可、
報酬:時間/成果、
責任:自由裁量
以上が、SES・SIer・技術者派遣を中心とした契約形態の違いと、その特徴です。
IT業界で働く・発注する際には、契約形態と責任範囲をしっかり理解することが重要です。
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